多くの高級ブランドを傘下に収める仏・LVMH(モエ・ヘネシー・モギビッシュルイ・ヴィトン)は、米宝飾大手ティファニーと買収で合意したと発表した。ルイ・ヴィトンやディオール、ブルガリ、ドン・ペリニヨンといった多くの高級ブランドを抱えるLVMHがなぜいまティファニーなのか。
70を超えるグループ会社を抱えるLVMH
LVMHが抱えているのはファッション・レザーグッズだけではない。ブルガリ、フレッド、ショーメ、デビアスといった高級ブランド、「ドンペリ」もLVMH傘下だ。
ファッションブランドは三つどもえ
ファッションブランド業界は欧州に拠点を持つ三グループが競り合っている。カルティエやダンヒル、ヴァンクリーフ&アーペルのリシュモン(スイス)、グッチやサンローラン、ブシュロンなどを展開するケリング(仏)も勢力を拡大している。
エルメス、シャネル、バーバリーといった独立ブランドの一角ティファニーが、今回LVMHのターゲットになった。
ファッションブランド3グループの年間売上高
LVMH 536億7000万ユーロ(2019年12月通期)
リシュモン 73億9700万ユーロ(2019年4~9月期)
ケリング 158億ユーロ(2019年度)
ティファニー 92.2億ユーロ(2019年度第3四半期)
ティファ二―買収額は162億ドル
LVMHが昨年11月に発表したティファニーの買収額は約162億ドル(1.6兆円)。LVMHにとっては最大規模の買収案件だ。
報道によると、当初は1株120ドルでの買収をLVMHが提案したがティファニーが拒否。値段を上げて買収にこぎつけた。買収は2020年半ばに完了する予定だ。
ウォッチ&ジュエリー部門強化がねらい
そこまでしてLVMHがティファニーを欲しがったのはなぜか。
LVMHの18年の売上高は468億ユーロ(5.5兆円)。19年は536億7000万ユーロ(6.4兆円)で売上高が前期比14.6%増に達した。
主力事業のファッション&レザーグッズ部門は前期比20.4%と好調だった一方、ウォッチ&ジュエリーの売上高は前期比6.8%増にとどまった。ティファニーの買収は、これにテコ入れすることがねらいだ。
アジアがターゲットに

「ティファニーで朝食を」で主演したオードリー・ヘップバーン
LVMHの地域別売上高で最大なのはアジア(31%)。ついで米国(23%)となっている。ティファニーは世界的に知名度抜群。そのブランド力でLVMHの「弱み」を補強。足場を固めて他グループを引き離すことが目的だ。
株価は上昇 高まる期待
買収を発表してから、LVMHの株価は上昇。新型コロナウイルスなど不安な要素はあるが、市場からの期待が伺える。
LVMHのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)は、売上高を2倍にしたブルガリを引き合いに、「ティファニーも同程度の目標を設定したい」と語っている。