ビジネス 実務

楽天「送料無料」はなにが問題か 独禁法の仕組みとあわせて解説

ネット通販サイト「楽天市場」をめぐり、独占禁止法違反の疑いがあるとして公正取引委員会(公取委)が調査している。
背景には、ECの利用増でプラットフォーマーの存在感が拡大していることがある。

3980円で送料無料 負担を出店者に


楽天三木谷浩史会長兼社長は2019年1月、楽天市場で「一定額以上送料無料」を採用したいと発表。
すでに楽天市場に出品している8割以上の店舗が「○○円以上送料無料」を打ち出しているが、統一するべきだ、との意見だ。

楽天は12月19日、出店者に対し、「楽天市場で消費者が3980円以上を購入した場合、2020年3月18日以降から『送料無料』と表示される」と告知した。

出店者は反発

この方針に対し、出店者団体で作る「楽天ユニオン」が反発。
公取委に、方針を撤回させる排除措置命令を出すことを求めた。

ユニオンは、一律導入でかつ、負担を出店者に負わせる方針を問題視した。
売上の大部分を楽天市場に頼る出店者にとっては、送料負担は大きな痛手となる。

公取委が立ち入り検査

楽天の方針発表を受け、企業活動の公平性を監督する公取委も動いた。

三木谷社長の方針発表に対し、かねて「独占禁止法違反のおそれがある」と口頭で伝えていた公取委。

2月になり、運営会社の楽天に立ち入り検査を実施。楽天側に対応を迫った。

何が問題になったのか

独占禁止法では、
「取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者」が取引相手に対し、「正常な商慣習に照らして不当」に、「地位を利用して不利益を与えること」を禁止している。

たとえば一方の企業が、もう一方との取引が、利益の大部分を占めているすれば、圧倒的な力の差があり、不当な条件を突き付けられる可能性がある。

今回のケースでは、ネット通販の草分け的存在で、多くの利用者がいる楽天市場に、強い力がある。

楽天側は実施に強気

一方、楽天は譲らない姿勢だ。立ち入り直後には、「法令上の問題はない」との意見を発表した。
送料無料」としていた表現は、「誤解をまねく」として「送料込み」に言い換え、批判をかわす構えだった。

さらに、この影響で退店する出店者には出店料を返すなどする方針を明らかにし、公取委に理解を求めた。

公取委は緊急停止命令申し立て


プラン開始が迫る2月28日、公取委は楽天にプランの一時停止を命じる緊急停止命令を出すよう東京地裁に求めた。

緊急停止命令とは

公取委の申し立てを受けて、裁判所が緊急の必要があると判断した際に、独禁法違反のおそれがある行為を一時停止させる命令。これまで7件の申し立てに対し5件で停止命令が出された。

全店実施見送りで休戦

緊急停止命令がもし認められれば、楽天のブランドイメージは大きく傷つけられかねない。
楽天はプラン開始まで2週間を切った3月6日、「一律導入」を見送った。

3月18日以降、出店者が送料無料を導入するかを選択できることにした。
さらに導入で出店者の負担が増えた場合、楽天側が一定期間支援金を提供する。送料無料を導入しない企業に対しては引継ぎ理解を求めていくとした。

ただ、方針変更の理由について楽天は「新型コロナウイルスへの対応」とし、公取委が影響していたかは名言を避けた。
公取委の一連の措置にも姿勢を変えなかったため、整合性を問われたくなかったためとみられる。

この対応を受けて公取委は、東京地裁に出していた緊急停止命令の申し立てを取り下げた。

アマゾンとしれつな市場争い


一連の騒動の背景には、先行するアマゾンに追いつきたい楽天の焦りがある。

市場調査会社のニールセンによると、2019年4月時点でのサービス利用者はアマゾンの5004万人に対し楽天市場は4804万人。

伸び率はアマゾンの10%に対し楽天は8%で、楽天にとってはどうしても追い抜きたいライバルだ。

日本のネット通販のパイオニアである楽天。アマゾンとの競争をどう勝ち抜くか、次の戦略に注目が集まる。

Copyright© M&A News by COVAVIS , 2020 All Rights Reserved.