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スペースジェットに暗雲 三菱重工が初の特別損失1,754億円

三菱重工業<7011>は、開発を進める国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の特別損失1754億円を2019年4~12月期決算に計上したと2月6日に発表した。スペースジェットに関連した減損処理を発表するのは初めてで、初号機の納入時期も21年度以降にずれ込むこともあわせて発表した。

スペースジェットは政府が補助金500億円を補助する一大プロジェクト

三菱航空機リリースウェブページより

三菱重工が手がけるスペースジェットは、半世紀ぶりの国産旅客機開発プロジェクトだ。先進操縦システム開発や、先進空力設計などの研究開発に、これまでに約500億円の公費がつぎ込まれているとされる。

多数の部品を使う航空機産業は裾野の広いビジネスで、政府が補助するのは特別なことではない。米国はボーイングに、欧州連合(EU)はエアバス(本部・オランダ)に補助金を投じている。政府が協力しながら、民間主導で航空産業の育成を目指している。

スペースジェットは、定員76~92人の「スペースジェットM90」と、定員65~88人の「スペースジェットM100」がある。米国内や、欧州地域を結ぶローカル線への採用を見込んでいる。今後は燃油価格の高騰が見込まれ、低燃費・低騒音を売りにするスペースジェットの需要が上がる、と三菱重工は見ている。

納入延期5回 設計が難航

当初、2013年に全日空に初号機を納入する予定だったが、これまで5度延期した。20年半ばとする現在の目標についても、6度目の延期が心配されている。

原因の一つが、設計や製造の難易度が高いことだ。三菱重工は1960年代に国産プロペラ機「YS11」を製造に参画したが、これを最後に国産旅客機は製造されていない。また、三菱重工はボーイングや自衛隊向けの航空機の部品製造を手掛けているが、航空機全体の製造に必要な技術が全く異なる。

「安全」お墨付きはまだ 受注失う

新たに証明された飛行機の安全性は、各国当局が定める基準をクリアする必要がある。だが、国の審査項目は数百。指摘が一つあればそのために設計変更が必要で、そのたびに100億円単位の出費になる可能性がある。

かねて開発の遅れが指摘されていたスペースジェットは昨年6月、これまでの「MRJ」から名前を変更。さらに、航空会社への納入後をみすえ、カナダの航空機メーカー「ボンバルディア」のメンテナンス部門を買収することを決めるなど前を向いている。

一方、昨年10月には米航空会社「トランス・ステーツ・ホールディングス」に100機を納入する契約がキャンセルされた。契約していたM90が、米の地方路線で定められた席数の上限をオーバーしてしまったためで、契約当初は上限が緩和されることを見込んでいたことが裏目にでた。席数の少ない「M100」の開発が急がれるが、再び契約が結べるかは不透明だ。これで、売上が見込める受注は163機分となった。

三菱重工は27日、国内組み立て初号エンジンでのスペースジェットの飛行に成功したと発表。三菱重工航空エンジンの島内克幸社長は「三菱航空機の完成機事業に加え、民間航空機エンジンの組み立てまでも日本国内でできるようになるということは、スペースジェットのサプライチェーンの信頼性向上に大きく貢献し、国内航空機産業の成長に向けて大変前向きで重要な意味がある」と述べている。2020年は、「日の丸ロケット」の正念場になりそうだ。

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