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多角化路線維持のキリン、アサヒと対照的なM&A戦略

「医と食をつなぐ事業」の育成をうたい、協和発酵バイオの子会社化など、多角化路線を進めるキリンホールディングス。本業のビールに力を入れるアサヒとは対照的なM&A戦略をとっている。国内市場が縮小する中、両社の戦略はどのような結果をもたらすのか。

キリンの脱・ビール依存

キリンは昨年4月、医薬品の協和発酵バイオを子会社化した。同8月には、化粧品・健康食品大手のファンケルと資本業務契約を結び、筆頭株主から市場外で株式を取得。共同の研究開発に力を入れている。キリンは2021年までの中期経営計画で、「医と食をつなぐ事業」を育成する方針を発表し、新規事業やM&Aに約3千億円を投じる計画だ。

事業の入れ替えも進めている。「中長期トレンドを見据え、ノンアル・クラフトを強化」する(キリンビール2020年度計画)とし、米クラフトビールメーカーを買収する一方、2007年に買収した子会社のライオン(豪)を、中国の乳業大手に売却した。

市場の反応はいまいち


キリンの思惑に反し、協和発行バイオとの契約発表後、キリンの株価は上昇していない。医薬品とビール、両者のシナジー効果がまだ見えにくいことなどが原因のようだ。

投資家が慎重なのは、過去のM&A戦略の「失敗」への警戒感もありそうだ。キリンは2011年にブラジル2位のビール・飲料企業を約3千億円かけて買収したが、わずか6年で売却。売却価格は770億円だった。

株主は反発

内部からも反発が出ている。株主の英投資運用会社インデペンデント・フランチャイズ・パートナーズ(FP)は、本業のビールに専念するよう経営陣に要求した。

「プロクター・アンド・ギャンブルやネスレのような著名な消費財企業でさえ、医薬品やスキンケアへの多角化に失敗した。キリンの戦略は成功すると経営陣が確信する具体的な要因は何か」

「協和キリンから協和発酵バイオを取得してわずか10ヶ月後、2019年度の経常利益が70%も下落した(中略)キリンのこの事業分野の業績予測が楽観的すぎるのではないか、との見方に対してどのような反論ができるか」

などとしている。

キリン経営陣は依然、多角化路線に理解を求める意向だ。

アサヒはビールに注力

アサヒビール本社

一方、2017年にビール売上高トップをキリンから奪ったライバル、アサヒ。キリンとは対照的にビールに注力する姿勢を見せている。

昨年7月、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)からオーストラリア事業を買い取った。「カールトンアンドユナイテッドブルワリーズ」など1.2兆円の大型買収だ。16~17年にも欧州ビールを買収。2020事業方針にも、「ビールに特化する」とうたった。

多角化のキリンと注力のアサヒ、はたして軍配はどちらに上がるか。

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